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恐怖心の正体

  • ゆか
  • Feb 26, 2024
  • 2 min read

Updated: Mar 1, 2024

村上龍の「限りなく透明に近いブルー」の終わり、「リリーへの手紙」として綴られたあとがきで、

「こんな小説を書いたからって、俺が変わっちゃってるだろうと思わないでくれ。俺はあの頃と変わってないから。」

とリュウは言い残す。


この小説は、19歳のリュウが仲間と過ごす空虚な日々の先に希望の色を見つける物語だ。

その色は「限りなく透明に近いブルー」

透けて見える、

だけど透明じゃない、

そんなブルーならなってみたい。


この小説を「そうなの、そうなの、」と思いながら読んでいる自分はいずれいなくなるのだろうか。

変わることでなにかを失う恐怖。

未来のリュウが言う「俺はあの頃と変わってないから」

そんなん信じられるかあ?!

信じられなくない?!

「俺はなにも変わってないぜ」「俺若者の気持ちわかるぜ」

って言ってる人たち大体わかってないし!

全然わかってないし!


はじめは透明に近かったブルーも、どんどん濃くなっていくだろう。

そしたら、透けて見えていたものが目を凝らさないと見えなくなる。

さらに濃くなって、ただの青に覆いつくされる。

そうなるともう、見えていたものが見えなくなる。


でもね、ずっと透けて見える人たちをゆかはたくさん知ってるんだ。

何度も何度もその半透明のガラスを汚されては、全身を懸命に動かして綺麗に拭きとる。

彼らが自分の視界をクリアにしておくために行うその行為は、彼らを見る側のゆかを安心させてくれる。

いずれそのガラスは、彼らが発する熱によってやわらかく溶け、彼らの身体をやさしく包み込むだろう。

その時初めて、まだここに存在しない、未知の色を体現できるのではないだろうか。


変わることでなにかを失う恐怖。

しかし、その恐怖心の正体は、実は喪失ではなく忘却なのだ。

その色の下に隠されたものは失くならない。

失くならないから安心してくれ。

 
 
 

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